神がイスラエルの民をエジプトから救い出された後、神は彼らに、ご自分の御言葉を覚え、それを子どもたちに強く印象付けるようにと命じられました。愛に満ちたやり方で、神は単に命令を与えただけではなく、イスラエルの民がその教えに忠実でいられるように、さまざまな方法も備えてくださったのです。
4 聞け、イスラエルよ。主は私たちの神。主は唯一である。 5 あなたは心を尽くし、いのちを尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。6 私が今日あなたに命じるこれらのことばを心にとどめなさい。7 これをあなたの子どもたちによく教え込みなさい。あなたが家で座っているときも道を歩くときも、寝るときも起きるときも、これを彼らに語りなさい。8 これをしるしとして自分の手に結び付け、記章として額の上に置きなさい。(申命記 第6章4-9節、新改訳2017)
6節で述べられているように、何かが“私たちの心にある”ためには、単に理解するだけでなく、それを自分の奥深くに蓄えておく必要があります。その瞬間に起こった感覚としてではなく、いつでも思い起こせるものへと変えていかなければなりません。言い換えれば、それを“記憶”にしなければならないのです。
先週、私は教会で開催された聖書クイズ大会に参加しました。その競技がどのように行われるのか、直接この目で確かめたかったのです。この行事と、それに参加したティーンエイジャーたちの姿を記憶に留めておきたかった。そうすれば、彼らのために祈る時、私の思いや言葉が聖書大会で実際に起きていることを正確に反映できると思ったからです。私が目にした光景に感銘を受け、祝福されたと言うのは控えめな表現です!
訪問後、私はもっと詳しく知りたくなりました。ティーンエイジャーたちが大会に向けてどのように準備しているのか知りたかったのです。大会に向けた準備を担当するコーチたちに尋ねたところ、以下のような回答を得ました。
– 教材を読み、繰り返し読む
– 自宅でワークシートに取り組む
– 教材の内容を書き出す
– 教材の内容を聞く
– 教材の内容を声に出して読む
各参加者は通常、自分に最も効果的な方法を見つけ出すか、あるいはさらに優れた独自の方法を編み出します。彼らは、より多くを記憶できるほど、競技で成功する確率が高まることに気づきます。様々な反復形式を用いた学習で記憶できる量に、彼らは驚嘆します。あなたにとって最も効果的な記憶法は何ですか?聖句を暗記することが、あなたの思考と言葉の基盤を形作ることに気づいていますか?
記憶は、脳のただ一つの部分に保存されているわけではありません。
長期記憶や短期記憶といったさまざまな種類の記憶は、互いにつながり合った異なる脳の領域に保存されています。以下の説明でそれぞれの領域がとりあげられる際に、下の図を参照して位置を確認してください。

長期記憶
長期記憶は2つの分野に分けられます。: 顕在記憶と潜在記憶です。
通常、私たちが「記憶」や「何かを覚えていること」について話すとき、それは意識的に思い出すことができる顕在記憶を指しています。顕在記憶はさらに二つのカテゴリーに分けられます。
一つは、自分に起こった出来事に関する記憶です。たとえば、友達があなたの誕生日にサプライズパーティーを開いてくれたときのことなどです。あるいは、一般的な事実や情報に関することです。たとえば、子どもの頃に使っていた最初の電話番号や住んでいた家の住所などです。
顕在記憶に関わる脳の重要な領域は3つあります。:海馬、大脳新皮質、そして扁桃体です。顕在記憶は、アルツハイマー病のような神経変性疾患によって、はっきり影響を受けます。
もう一つの長期記憶は潜在記憶、つまり無意識の記憶です。これらの無意識の記憶は、運動技能を伴う、学習された手順である場合があります。たとえば、自転車の乗り方を覚えることや、キーボードでタイピングする方法を覚えることなどです。
潜在記憶はプライミングによって生じることもあります。プライミングとは、ある刺激への暴露が、脳の他の刺激への反応に影響を与えるということです。プライミングの一例が言葉の連想です。「海岸」という言葉を聞けば、自動的に「砂」とか「海」という言葉を思い浮かべることがあります。潜在記憶は、大脳基底核と小脳に依存しています。
短期記憶
短期記憶は、脳が少量の情報を短い時間だけ覚えておくことを可能にします。その中でも最も短いタイプの記憶は「作業記憶」と呼ばれ、ほんの数秒ほど保つことができます。この記憶は、ほかの認知的な処理を行いながら、情報を頭の中に一時的に保持しておくときに使われます。たとえば、新しく知り合った人が言った電話番号を覚えながら、スマートフォンのメニューを操作して連絡先に追加するような場合です。作業記憶の能力は、標準的な心理テストで測定される一般知能の最も有力な指標の一つとされています。
短期作業記憶は、主に前頭前野に最も強く依存しています。前頭前野は、あなたという人間を形づくるうえでとても重要な部分であり、日常生活にも大きな影響を与えています。前頭前野は「実行機能」と呼ばれる働きを通して、思考・感情・行動をコントロールします。この機能は、計画を立てること、意思決定をすること、問題を解決すること、集中力を保つこと、そして新しい状況に適応するときに必要となるのです。
外傷性脳損傷は、前頭前野にさまざまな程度の損傷を与えることがあり、軽い脳震とうから、脳卒中、交通事故、爆発による衝撃やその他の戦闘による負傷に至るまで、その程度は幅広いものです。しかし、神が脳を「神経可塑性」という可能性を備えて創造されたため、かつては実行機能の一部が失われると永久に回復しないと考えられていたことも、今ではそうではない、とされています。前頭前野が損傷を受けた後でも神経可塑性が働くことで、脳は再編成され、損傷を補おうとし、多くの場合、前頭前野の近くの領域がその機能を引き継ぐようになります。リハビリテーションの過程では、新しい神経経路が形成され、神経同士の結びつきが強まり、新しいシナプスが作られます。その結果、失われた処理能力が回復することがよくあります。
ヨハネによる福音書14章には、イエスが弟子たちを慰めている場面が記されています。イエスは、ご自分がまもなく父のもとへ去って行くこと、そして弟子たちは一緒に行くことができないことを告げました。父の家には住まいがたくさんあること、そしてご自分は弟子たちのために場所を備えるためにそこへ行くのだと約束されたのです。
イエスは弟子たちに、ご自分が戻って来て、彼らを連れて行き一緒にいるようにする、と告げられました。そして、彼らはご自分がどこにいるのかを知るようになる、とも言われました。さらにご自身を愛し、その教えを守ること、そして、主にお願いして、弟子たちを助けて永遠にともにいてくださる「助け主」を与えていただくと約束されました。
脳の損傷が必ずしも永久的なものではなく、修復される可能性があるのと同じように、イエスもまた、ご自身との別離に対して、聖霊の約束という回復の道を備えてくださいました。私たちは、もはやイエスが水の上を歩く姿や、多くの人々に食べ物を与える奇跡を見ることができないからといって、希望を失い、絶望して生きる運命ではないのです。大きなことにも小さなことにも、目に見える形でも見えない形でも、神は今もなお、私たちの人生という織物の中で働き続けておられます。不可欠なことは、私たちが神の御業を覚えていることです。とりわけ、神が遠く離れ、沈黙しているように感じられる時期にこそ、それは重要です。もし神の約束が「私たちの心に刻まれている」なら、私たちはその御言葉を真に信じることができるのです。
25 これらのことを、わたしはあなたがたと一緒にいる間に話しました。26 しかし、助け主、すなわち、父が私の名によってお遣わしになる聖霊は、あなたがたにすべてのこと教え、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださいます。(ヨハネ14章25-27節 新改訳2017)